haremaru’s diary

文芸創作の方法などなどについて書いていくブログです。

【感想】私たちのバイクの旅と、ささやかながら与えられた救いについて

Hybrid Library より発売された、第五弾作品。

 

 

私たちのバイクの旅と、ささやかながら与えられた救いについて (Hybrid Library)

私たちのバイクの旅と、ささやかながら与えられた救いについて (Hybrid Library)

 

 

私たちのバイクの旅と、ささやかながら与えられた救いについて (Hybrid Library)

 

 

さっそく読ませていただきました。

 

『私たちのバイクの旅と、ささやかながら与えられた救いについて』は、面白い作品ではない

『私たちのバイクの旅と、ささやかながら与えられた救いについて』は、面白い作品ではない - Stareatphenix -一ノ瀬芳葵-

 

作者である一ノ瀬さんはこのように書かれていますが、面白かったです。

ドキドキわくわくの面白さではないですが「小説を読んでいる」ということを感じさせてくれる面白さでした。

 

この物語は東日本大震災を扱ったものですが、主人公である中学3年生の女の子・菜津美は直接の被災者ではありません。

地震で疎遠だった祖父を失いますが、彼女にそのショックはさほどなく、普通に生活をしています。

しかし震災以降、

「なにをがんばっても、災害は避けられないし、そこで死んだらみんなおしまいじゃん」

という諦観を彼女は覚えてしまいます。

思春期特有のもどかしい感情。誰しも一度は考えたことがあるだろう考え。

一人の女の子が、「祖父の死」と向き合うことでそれを乗り越えていく様子が丁寧に描かれています。

 

晴丸もそういった無常観に襲われてなにもできなくなった時期がありました。

そのときに晴丸を救ってくれたのは「半月」でした。

 

 半分の月がのぼる空―looking up at the half‐moon (電撃文庫)

 

乗り越えた結果「創作」というものに行き着いて今に至るわけですが……。

 

「私たちのバイクの旅と、ささやかながら与えられた救いについて」も、誰かにとってのそんな作品になるのでは、と思います。